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横浜地方裁判所 平成6年(行ウ)29号 判決

原告

多田芳夫(X)

(ほか二四九名)

原告ら訴訟代理人弁護士

保持清

山崎雅彦

武内更一

松島宇乃

原告圷清訴訟代理人弁護士

斉藤驍

藍谷邦雄

原告圷清、同藤本年生及び同諏訪間誠訴訟代理人弁護士

大川隆司

被告

神奈川県知事 (Y) 岡崎洋

右指定代理人

伊東顕

日出山武

北川益雄

根岸良一

中道衆矢

小野義博

萩野良允

徳江正則

日高宏文

平野浩一

事実及び理由

第二 事案の概要

〔中略〕

一  争いのない事実

1  被告は、横浜市営地下鉄一号線(以下「地下鉄一号線」という。)に関して、既に開業した区間(あざみ野―戸塚間)について、都市計画法(以下「法」という。)に基づき横浜国際港都建設計画都市高速鉄道第一号市営地下鉄一号線として都市計画決定をしていた。

2  被告は、平成五年三月二三日、地下鉄一号線に関し、横浜市泉区下飯田町、和泉町及び中田町地内、並びに戸塚区汲沢八丁目、汲沢二丁目、汲沢一丁目、矢部町及び戸塚町地内の延長部分を追加する都市計画変更決定(以下「本件変更決定」という。)を行い、神奈川県告示第三〇五号として告示した。

3  そして、被告は、同日、地下鉄一号線を、右に続けて更に藤沢市内に延長する部分である藤沢市区域内の今田地先から湘南台一丁目の区間について、藤沢都市計画都市高速鉄道一号都市高速鉄道一号線(以下、1項の都市計画決定に係る地下鉄一号線に関し、2項の区間と右の区間を延長する部分とをあわせて、「本件延長部分」という。)として都市計画決定(以下、「本件都市計画決定」という。なお本件変更決定とあわせて、「本件決定等」という。)を行い、神奈川県告示第三〇四号として告示した。

4  本件延長部分は、地下鉄一号線を、現在の開業区間の終点である戸塚駅(地下鉄)から西に七・三九キロメートル延長して、小田急電鉄江ノ島線(以下「小田急線」という。)湘南台駅に接続することを目的とし、別紙「戸塚~湘南台間建設計画図」のとおり、同計画図における立場駅予定地先から西の湘南台駅予定地手前までのうち、二・三キロメートルの区間については、地上部分に路線建設を予定している(以下、延長部分のうち、地上部分の建設予定地を「地上部分」という。)が、それ以外の部分についてはシールド式による地下工事が予定されている。

〔中略〕

第三 争点に対する判断

一  (本案前の申立てについて)

1  前記争いのない事実に加え、〔証拠略〕によれば、以下の事実を認めることができる。

(一)  本件延長部分のうち、横浜市南西部地域(戸塚区・泉区)は、横浜都心へ一五キロメートル、東京都心へ四〇キロメートルに位置し、横浜・東京のベッドタウンとして通勤・通学の輸送需要の増加が著しい地域であったことから、小田急線湘南台駅まで路線を延長することによって、横浜市南西部地域と横浜都心部を直結し、既設鉄道と連絡することにより有機的な鉄道網を形成し、横浜市全域の交通の利便性をより一層充実させることが要望された。

また、本件延長部分のうちの藤沢市内の湘南台地区は、既に土地区画整理事業が完了した地区を含む北部地域の都市拠点として位置づけられており、地区周辺には平成二年に開校した慶応大学をはじめ、いすゞ自動車工場を含む北部工業団地等が立地していた。また、地区西側には健康と文化の森構想なども計画されており、本件延長部分により、湘南台地区は、新たな拠点としての機能集積を図ることにより、文化・商業事業等の一層の活性化が予想された。そこで、当時、小田急線湘南台駅より新宿副都心へ直結されていたものを、更に横浜都心部へ連結することにより、広範な領域への玄関口として機能を高め、交通利便性をより一層充実させることが要望された。

そこで、被告は、それら要望を基礎として地下鉄一号線に本件延長部分を追加することを計画し、原案を作成して横浜市及び藤沢市の意見を聞くとともに、平成三年一一月二六日から同年一二月一〇日まで縦覧を行った。

そして、平成五年二月九日、原案が神奈川県都市計画地方審議会で審議の上可決されたので、被告は、同月一八日、建設大臣の認可を得て、同年三月二三日、地下鉄一号線に関し、横浜市内、藤沢市内に本件延長部分を追加する本件決定等を行い、神奈川県告示第三〇四号、同三〇五号として告示し、同日から都市計画を表示する図書を縦覧に供した。

(二)  本件決定等は、法一一条一項の都市施設のうち、都市高速鉄道に関する都市計画決定ないし同変更決定である。そして、法一四条によれば、それら都市計画は、総括図、計画図及び計画書によって表示することとされているところ、同法施行規則九条一項、二項によれば、総括図については縮尺二万五〇〇〇分の一以上の地形図に都市施設のおおむねの位置を記載することが要求され、計画図については、二五〇〇分の一以上の平面図として作成することが要求されている。また、計画書については、法一一条二項、同法施行令六条一項四号、同条二項、同法施行規則七条六号によれば、都市施設の種類、名称、位置、区域、構造(嵩上式、地下式、掘割式又は地表式の別及び地表式の構造の区間において鉄道又は自動車専用道路若しくは幹線街路と交差するときは立体交差又は平面交差の別)によって表示されねばならないとされている。

本件決定等においては、〔証拠略〕のとおり、線路部分については、名称、位置、区域、構造形式(嵩上式、地下式、掘割式又は地表式の別)及び地表式区間における幹線街路等との交差の構造(立体交差又は平面交差の別等)が表示されており、主要施設については、名称、位置、面積、ホーム長について表示されている。

また、都市計画事業を施行する者(施行者)は、法五九条の規定によれば、都道府県知事又は建設大臣の認可又は承認を受けた市町村、都道府県、国の機関及びこれら以外の者であるが、本件決定等においては、施行者はいまだ定められていない。

2  ところで、抗告訴訟の対象となる行政処分というためには、当該行政庁の行為が個人の法律上の地位ないし権利関係に対し、直接具体的な影響を及ぼす性質のものでなければならないと解される。

ところで、原告らが無効確認を求めている本件決定等は、都市施設に関する都市計画決定ないしその変更決定であるところ、そもそも、それは法二条に定める「健康で文化的な都市生活及び機能的な都市活動を確保すべきこと並びにこのために適正な制限のもとに土地の合理的な利用を図ること」を基本理念とし、同じく法一三条に定める都市計画基準に適合するように、土地利用、交通等の現状及び将来の見通しを勘案して、適切な規模で必要な位置に都市施設を配置することにより、円滑な都市活動の確保、良好な都市環境の保持を目的(同条一項六号)として、高度の行政的、技術的裁量により一般的、抽象的にされる性質のものである。

そして、本件決定等に至る具体的経過をみても、前記1のとおり、本件決定等は、総括図、計画図及び計画書によって表示することとされているところ、総括図については縮尺二万五〇〇〇分の一以上の地形図に都市施設のおおむねの位置を記載することを、計画図については、二五〇〇分の一以上の平面図として作成することを、計画書については、都市施設の種類、名称、位置、区域、構造等で表示されることをそれぞれ要求されているにとどまるものである。

したがって、これらによれば、本件決定等により、原告ら都市施設の周辺住民等の権利にどのような具体的な変動を及ぼすかが確定されたとはいえないから、本件決定等は個人の具体的権利義務に影響を及ぼすものではないというべきである。

そして、本件決定等の計画に基づいて、都市計画事業として施行が認可され、事業主体、事業手法及び施行時期が確定し、周辺住民等に対して、土地収用等の個別的、具体的な処分がされたときに、はじめて当該住民等に具体的な権利変動が及ぶものであるから(法五九条等)、それ以前の段階にある本件決定等は、行政処分性を欠くというべきである。

3  原告は、計画図は、収用、使用の物件等を二五〇〇分の一の平面図により図示できるから、これは単なる青写真とはいえず、具体的な処分とみるべきであり、また、本件決定等により、建築制限(法六五条)、土地の譲渡の制限(法六七、六八条)、土地収用(法六九ないし七三条)、補償(法七四条)等の効力が発生するから、これらは本件決定等の段階で抗告訴訟を認めるべき根拠となると主張する。

しかし、計画図に収用予定として図示された物件について、本件決定等がされることによって直ちに収用等がされるものではないから、その効果としての不村益が直ちに原告らに及ぶものではない。

また、土地の形質の変更や新規建築等に対する制限(法六五条)、土地のいわゆる先買権(法六七、六八条)についても、当該区域内における不特定多数の者に対する一般的、抽象的な制限にすぎず、特定の個人に対する具体的な処分ではないばかりか、法六九条以下の規定は、単に都市計画事業について、土地収用法三条各号の一に規定する事業に該当するものとみなし、収用の可能性を規定したにすぎず、法七四条についても、収用されることとなった場合についての規定であるから、これらはいずれも本件決定等の効果として個人の権利に対して直接影響を及ぼすものではなく、本件決定等に伴う付随的な効果にとどまるというべきである。

更に、原告の、都市計画決定と都市計画事業認可とは一体的な行政行為であるとか、都市計画決定が確定力、執行力等を持つなどとの主張についても、そのように解すべき実体法上の根拠を欠くうえ、都市計画決定自体が、個人の権利に対して具体的な変動を及ぼすものでないことは前述のとおりである。

したがって、原告の右主張はいずれも失当である。

このように解したとしても、都市計画事業の認可又は承認がされた段階において、特定の者に対し、個別的具体的な制約が課されたこととなり、その段階で、それらの具体的な処分に対する抗告訴訟を提起することが可能であり、その場合、その前提としての都市計画決定の違法を主張することができると解されるから、不都合はないというべきである。

二  (結論)

以上によれば、本件決定等にはいずれも行政処分性がなく、本件訴えは、その余の点を判断するまでもなく、いずれも不適法であるから、これを却下することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 浅野正樹 裁判官 秋武憲一 今井弘晃)

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